キッチン掃除編|油汚れや焦げにはなぜアルカリ性?

「キッチンの油汚れがなかなか落ちない…」そんな悩みを抱えていませんか?
実は、その汚れには“アルカリ性洗剤”が有効なのですが、なぜそうなのかをご存じでしょうか?
本記事では、キッチンでよく見られる汚れの正体と、それに合った洗剤の選び方・使い方を、薬剤師の視点からやさしく解説します。
仕組みを知れば、頑固な汚れも効率よく落とせるようになりますよ。
キッチン汚れの正体を知ろう
キッチンで特に厄介なのが、油汚れや焦げ付き。
「洗剤を使ってもベタベタが取れない」「力を入れてこすってもスッキリしない」と感じたことがある方は多いのではないでしょうか?
まずは、キッチン汚れの“正体”を理解することから始めましょう。
油汚れの正体は“酸化した脂質”
料理中に飛び散った油は、空気中の酸素と反応して「酸化」します。
この酸化した油は、時間の経過とともにベタベタからカチカチに変わり、素材にしっかりと付着してしまいます。
また、油にはタンパク質や糖分などの食品成分が混ざることで、構造が複雑化。
こうなると、単なる界面活性剤だけでは太刀打ちできません。
そこで必要になるのが「アルカリ性洗剤」なのです。
汚れが付きやすい場所とは
キッチンの中でも、特に汚れが蓄積しやすい場所には以下のような共通点があります。
- 換気扇・レンジフード:油がミスト状になって吸い込まれ、羽やフィルターに付着
- ガスコンロ周辺:調理中に油や調味料が飛び散る
- 壁・床:空気中の油分が静かに付着していく
- 電子レンジ・オーブン内:加熱による飛び散りが内部に蓄積
見た目では分かりにくい場所も多く、気付いた時にはかなり頑固な汚れになっていることも珍しくありません。
アルカリ性洗剤が効く理由
「アルカリ性洗剤が効く」と聞いたことはあっても、「なぜ効くのか?」を知っている方は少ないかもしれません。ここでは、その“理由”を化学的な視点で紐解いていきましょう。
アルカリ性が油を分解するメカニズム
油汚れに対してアルカリ性洗剤が強い理由は、2つの化学的な反応が関係しています。
- けん化(鹸化)反応
油脂とアルカリが反応して「石けん」に変化する現象。
→ これにより、油が水に溶けやすくなります。 - 加水分解
タンパク質やデンプンなどの汚れを水に分解する働き。
→ コンロ周りのこびりつきにも有効です。
つまり、アルカリ性洗剤は単に「油を溶かす」のではなく、「化学的に分解して洗い流しやすくしてくれる」わけです。
アルカリ性洗剤の種類と特徴
アルカリ性洗剤にはいくつかの種類があります。それぞれの特徴と使いどころを押さえておきましょう。
洗剤の種類 | pH | 特徴 | 適した場面 |
---|---|---|---|
重曹 | 約8.2 | 弱アルカリ性・素材に優しい | 軽度の油汚れ、日常の掃除 |
セスキ炭酸ソーダ | 約9.8 | 重曹より洗浄力が高い | 換気扇や壁の油汚れ |
炭酸塩(炭酸ソーダ) | 約11 | 強いアルカリ性・短時間で強力 | 焦げ、ベタつきのひどい箇所 |
※使用の際は、ゴム手袋やマスクの着用をおすすめします。
正しい使い方と注意点
洗剤は「何を使うか」も大事ですが、「どう使うか」も非常に重要です。
効果を最大限に引き出すための使い方と、注意しておきたいポイントを紹介します。
「浸け置き」「温め」「拭き取り」のコツ
1. 浸け置きが基本
換気扇のファンやフィルターは、セスキ炭酸ソーダを溶かしたぬるま湯に30分ほど浸け置きします。こすらずとも汚れが浮いてくることが多いです。
2. 温めるとより効果的
油は冷えると固まりやすくなります。洗剤を使う際は40~50℃程度の温水を使うと、分解がスムーズに進みます。
3. 仕上げ拭きでベタつき防止
アルカリ性の洗剤成分が残っていると、素材を傷めることもあるため、最後は中性洗剤または水拭きでしっかり仕上げましょう。
使用時の注意点
アルカリ性洗剤は強力ですが、以下のような注意点もあります。
- 素材に注意:アルミや銅などの金属、天然木は変色・腐食のリスクあり
- 安全対策を忘れずに:手袋・マスク・換気を徹底
- 混ぜない:酸性洗剤と混ざると化学反応で危険(次亜塩素酸と同様に要注意)
まとめ|理屈を知ればキッチン掃除はもっと楽になる
キッチンの油汚れは、放っておくとどんどん蓄積し、通常の拭き掃除では手に負えなくなります。
しかし、「汚れの正体」と「洗剤の仕組み」を理解すれば、無理に力を入れたり、繰り返し掃除する必要はありません。
アルカリ性洗剤は、酸化した油脂を分解する“科学の力”。
薬剤師の立場から見ても、これは非常に理にかなったアプローチです。必要に応じて重曹、セスキ、炭酸塩を使い分けることで、キッチン掃除がぐっと楽になります。
次回は「お風呂掃除編」。水垢やカビの性質と、それぞれに適した洗剤の使い方をご紹介します。どうぞお楽しみに!
投稿者プロフィール

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2015年~ 県立広島病院で勤務、主に外来のがん治療を行う患者さまの抗がん剤注射剤の調製、お薬の服薬指導、私生活のサポートを行う。
2019年~ 県立安芸津病院へ転勤 栄養サポートチーム(NST)に所属し栄養管理や整形外科での人工関節手術後のサポートを行う。
2021年~ あすなろ薬局で勤務
2023年~ 臨床栄養医学指導士を取得し、薬に加えて栄養指導も行っている。
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